エアコンクリーニングの作業前には、必ず試運転を行って動作確認をしています。
今回は千葉県内のお客様宅で壁埋め込みタイプ(2008年製)のエアコンクリーニングを担当した際、HIKMICRO B10S によるサーモグラフィ測定で、他のエアコンとは明らかに異なる温度分布を発見しました。
クリーニング前に故障を把握できたことで、お客様へ適切な説明と対応ができた事例としてご紹介します。
発見の経緯:サーモカメラが捉えた異常
試運転中、HIKMICROのサーモカメラ B10S(放射率ε:0.91、測定距離1.5m)で各エアコンの吹出口温度を確認していたところ、1台だけ明らかに異なる温度分布を示しているものがありました。
サーモ画像の読み取り(冷房運転中)
| 計測値 | 内容 |
|---|---|
| 中心温度(Cen) | 21.2〜21.5℃ |
| 最低温度(Min) | 10.4℃ |
| 最高温度(Max) | 35.4℃ |
- 吹出口付近に青〜緑の低温帯が一部見られるものの、風の流れが感じられない
- パネル面がほぼ均一な室温(20〜21℃台)のまま
- 右端に赤いホットスポット(電装系・摩擦熱の可能性)
正常なエアコンであれば冷房運転時に吹出口全体が低温(青〜緑)になるはずですが、このエアコンは熱交換器が冷えているにもかかわらず、冷気が出てこない状態でした。
現地確認:ファンが回っていない
実際に手をかざして確認すると、吹出口からほとんど風が出ていないことが判明。
エラーコードの表示はなし。基板上のランプも正常点灯。
この状態から考えられる原因を整理しました。
私の見立て:サーミスタ(室内温度センサー)不良の可能性
エラーなしでファンが止まる場合、考えられる原因のひとつがサーミスタ(吸い込み温度センサー)の不良です。
推定メカニズム
- サーミスタが誤った温度を検知
- 「室温はすでに設定温度に達した」と基板が判断
- ファンを停止(または極低速)
- 冷媒は流れているが風が出ないため冷気が届かない
- サーモカメラには「熱交換器が冷えているが吹出口が室温」という矛盾した像が映る
2008年製ということもあり、サーミスタの経年劣化による抵抗値ズレは十分考えられます。サーミスタは比較的安価な部品ですが、型番によっては廃番になっているケースもあるため、確認が必要です。
エラーが出ない理由
サーミスタの断線や完全なショートではなく、抵抗値が正常範囲内でズレている場合、基板はエラーと認識しません。このため「エラーなし・でも動かない」という診断が難しい症状が出ます。
現場で確認できなかったこと(反省点)
今回、暖房での試運転を行わなかったことが診断の精度を下げた一因です。
暖房運転であれば:
- ファンが回るかどうかをより単純に確認できる
- サーミスタの影響を受けにくい条件での動作確認ができる
- 冷媒系との切り分けがしやすい
次回同様の症状が疑われる場合は、冷房・暖房の両モードで確認することを標準手順にします。
サーモカメラを使う理由
今回使用した HIKMICRO B10S は、スマートフォン不要で単体での静止画・動画撮影ができるハンディタイプの赤外線サーモカメラです。
エアコンクリーニングの試運転確認に使うことで:
- 目視では気づけない温度ムラを可視化できる
- クリーニング前に故障を発見し、「洗ったのに直らない」というトラブルを防げる
- お客様への説明時に画像として証拠を示せる
特に壁埋め込み・ハウジング型エアコンはパネルを外さないと内部が見えないため、サーモカメラによる非破壊診断は非常に有効です。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 機種 | 壁埋め込みエアコン(2008年製) |
| 症状 | ファン停止・風なし・エラーなし |
| 診断ツール | HIKMICRO B10S(サーモカメラ) |
| 推定原因 | サーミスタ(吸い込み温度センサー)不良 |
| 発見タイミング | クリーニング開始前の試運転確認 |
エアコンクリーニングの前に試運転確認をしっかり行い、サーモカメラで温度分布を可視化することで、「洗浄後に故障が発覚した」というリスクを事前に排除できます。
同様の症状(エアコンをつけても風が出ない・冷えない・エラーなし)でお困りの方はお気軽にご相談ください。
よくある質問
エアコンのランプが正常なのに風が出ないのはなぜですか?
エラーが出ていなくても、サーミスタ(温度センサー)の劣化により基板が誤った温度を検知し、ファンを停止させることがあります。2008年製など製造から15年以上経過した機種では特に起こりやすい症状です。
サーモカメラで何がわかるのですか?
赤外線サーモカメラを使うと、エアコンの吹出口・熱交換器・電装部品の温度分布を可視化できます。正常なエアコンとの温度差を比較することで、目視では気づけない異常(冷媒漏れ・ファン停止・電装系の発熱)を早期に発見できます。
壁埋め込みエアコンのクリーニングと修理は同時にできますか?
はい、可能です。クリーニング前の診断で故障が判明した場合、修理の必要性と費用をご説明した上で対応方針を決めていただきます。クリーニングのみ・修理のみ・両方同時対応、いずれも承ります。
壁埋め込みエアコン(ハウジングエアコン)の分解洗浄については、ハウジングエアコン専門クリーニングページもあわせてご参照ください。エアコンのA3エラーでお困りの方はダイキンA3エラー緊急修理ページをご覧ください。
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